1.3 MBAにおける時間費用
さて、MBAの費用の構造が大まかに掴めたところで、次に注目したいのが「時間」です。時間は「見えにくい費用」の典型例ですが、同時に最も気をつけなければ費用の一つだと思います。
【コラム】例えば、AさんはTOEFLの試験でスコアを10点あげるのに、語学学校等に通わず(一切余分なお金を使わず)自分で勉強して50時間かかったとします。一方、語学学校に通ったBさんは、10点あげるのに、学校に10万円払ったが20時間で済んだとします。Aさん、Bさんの時給(時間当たりに稼げる価値)が2,000円と仮定する。すると、Aさんがこの学習で費やした(時間費用を含む)費用は、時間費用:50時間×2000円=200,000円(20万円)です。Bさんの費用は、時間費用:20時間×2,000円=40,000(4万円)+語学学校の費用:10万円=14万円です。つまり、時間を適切に費用として計算すれば、Aさんは20万円、Bさんは14 万円の費用で、同じ成果を挙げたことになります。MBAの費用を抑えようと、できるだけ語学学校に通わず頑張ったAさんは、結果として損をしているかもしれないのです。よって、MBAの費用を考える時も、授業料や住宅費用といった「見えやすい費用」だけではなく、「見えにくい費用」である時間費用も含めるのが合理的かもしれません。
さてMBAに必要な時間(時間費用)を大きく2つに分類すると、実際MBA留学中である「MBAの取得期間」と「MBAの準備期間」(多くの場合は日本国内における)があると思います。まずは前者についてオーストラリアのメリットを伝えておきます。
MBAの取得期間
アメリカの場合、EMBA(Executive MBA)など特殊なものは別として、一般的なMBAでは2年間です。また入学時期はおおよそ9月(受験は10月から翌年の3月頃)に集中しています (Pre スクールなどを考慮すると7月くらい)。一方でオーストラリアの場合、期間として多いのは1年半。最短では(ヨーロッパMBAでもあるような)1年のコースもあります。概してアメリカよりも短期間に取得できます。取得期間が半年変わることの意義は極めて大きいです。1.2で紹介した表「MBAのコスト一覧表」でもご紹介した通り、取得期間が減れば、MBAの費用のうち二番目に大きかった「住宅費用」を軽減できるからです。例えば現地での住宅費や生活費を半年節約できれば、100万円以上出費が抑えられる可能性は十分あります。さらに機会費用を低減することにも貢献します。半年早くから仕事に復帰できるということは、その分給料を得られる時期が早まることを意味します。さらに、オーストラリアには、アメリカと異なり出願を年4回入学時期を設けている大学も多く、仕事をしながら出願する社会人にとって受験や出願スケジュールを調整しやすい特徴も持っています。
オーストラリアのMBAで具体的な取得期間については、次のページでも詳細に紹介しているので、是非参考にしてほしいと思います。
> オーストラリアMBA ベスト10校のコスト、卒業後年収、入学条件など
MBAの準備期間
次に後者「MBAの準備期間」について考えてみます。少しでもMBAの受験勉強を経験した人であれば分かると思いますが、受験までにTOEFLやGMATに費やす時間は相当なものです。MBA自体が2年間のプログラムだとして、その受験準備に1年、場合によっては2年程度の準備期間が必要になることもざらです。私の場合には本格的な勉強が始めたのが、2015年4月であり、2016年3月に頃まで出願書類を作っていたので、1年2か月ほどは費やしていました。もちろん、その前にも会社内の社内選考に選ばれるための英語の勉強などをしていたことを考えると、それ以上の準備期間を割いていたと言えます(もちろん、期間と言っても、実際には平日は帰宅後や週末などだけですが)。1.2で紹介した表「MBAのコスト一覧表」では「機会費用」はとりあえず0円としたのですが、MBAのための時間がもし他の目的に使えていればできたであろう業務(またそれによる給料)、参加できたであろうイベント、他の何か別の勉強するための機会(機会費用)も無視できません。また時間費用も然りである。
さて、MBA受験勉強に必要な主なものとしては、TOEFL/IELTSの勉強、GMAT/GREの勉強、その他の選考書類の準備(レジュメ、エッセイ、推薦状、日本の大学の成績証の取り寄せ等々)がありますが、時間がかかる割合でいえば、圧倒的に「TOEFL/IELTSの勉強」と「GMAT/GREの勉強」になると感じています。ちなみに、その他の選考書類の準備は、アメリカ、オーストラリア両者のMBAを応募した経験から言ってほとんど同程度です。ここではオーストラリアとアメリカの両方のMBAの受験した経験から、それらの違いを少々詳しく解説していきます。
「TOEFL/IELTSの勉強」
オーストラリアではTOEFLではなく、(イギリス圏で主流である)IELTSを受験すべきと考えている人も多いようだが、実を言うとほとんどのオーストラリアの大学でどちらの試験結果も受け入れているため、どちらを受験しても良いです。次にアメリカとオーストラリアの場合で、どちらがより簡単に入れるのか?どちらが勉強量が少なくて済むのか?という問題ですが、(もちろん大学のレベルにもよるが)結論を言うと、どちらを選んでもMBA合格のために必要な英語の勉強時間は同じ程度と言えると思います。しかし、オーストラリアの場合には、通常の入学プロセスとは別に、語学学校経由で入学するという道(パスウェイ)が豊富に存在する特徴があります。これは英語の試験結果が入学基準点に満たない場合、同大学のMBAが提携している語学学校(ちなみにマッコリー大学自体も語学学校を運営している)である基準点以上の成績で合格すれば、本試験免除で入学できる仕組みです。これは英語学習にかけられる時間が極端に少ない社会人にとっての朗報かもしれません。つまりこれを考慮に入れれば、オーストラリアの方が、費用(時間とお金)を節約できると可能性が高いと考えています。
「GMAT/GREの勉強」
最大の違いが生じるのが、実はGMATやGREです。先に確認ですが、GMATはOKだが、GREは受け入れていない学校もあるため注意が必要です。
まず第一にオーストラリアのMBAでは、GMAT/GRE試験自体が免除になる大学があります。ただ、実はアメリカにも同様の大学はあるため、それらの大学同士での比較検討する必要があります。さて、結論だけ言うと、アメリカやイギリスの大学でGMAT/GREが不要の大学は、MBAランキングが(正直かなり)低い大学ばかりになると思われます(当時)。逆にオーストラリアの大学は、非常に高いランキングの大学もあります。実は、マッコーリ大学はFainancial Times(FT)のランキングで49位(2017年)とこれらの大学の中では非常に高いです。よって初めからGMAT/GREの勉強を省略したい、あるいは省略せざるを得ない事情がある人にとっては、オーストラリアのMBAは非常に魅力的かもしれません。
第二にGMAT/GREが必要な大学同士での比較をしてみます。オーストラリアの場合トップレベルのMBAでも、概ね GMAT550点以上あれば問題ないと考えて良いです(2018年時点)。特に最近アメリカの大学では、要求されるGMATの点数が年々上がっている傾向(GMATインフレなどと呼ばれる)を考えれば、同程度のランキングの大学同士を比べた場合、オーストラリアの大学の方が、一般に簡単ということが言えるかもしれません。
オーストラリアのMBAで具体的な必要になるTOEFL/IELTSのスコアや、GMATのスコアについては別のページで詳細に紹介しているので、そちらのページも是非参考にしてほしいと思います。